旅に出て、必要に気づき、作って届ける。

このプロセスこそがOFFLAPのものづくりの原点です。私たちは「多くの人々が冒険心に満ち溢れる自転車移動を楽しむ世界」をビジョンに掲げています。その世界を現実にするためのギアを開発し、届けることが私たちのミッションです。

通勤や買い物といった日常の移動も、冒険のひとつだと私たちは考えています。だからこそ、実際に自分たちが移動し、体験する中で「こんな道具があったらいいな」と感じたものを形にしていきます。

日々の移動に、ほんの少しの冒険を。そんな想いから生まれたギアが、あなたの冒険にも役に立てたら嬉しいです。

初めまして。OFFLAPを運営しております、小薗(こぞの)と申します。

2019年、「自分で鞄を作ってみたい」という漠然とした想いから起業しました。その後、コロナ禍で電車通勤が難しくなったことをきっかけに、自転車でシェアオフィスに通うようになり、日常の移動がちょっとした冒険になる感覚に目覚めました。そこから、OFFLAPというブランドの構想が本格的に始まりました。

テストも兼ねた自転車走行は年間8000kmを超え、とある週末には、かつて車でしか行けないと思っていた自宅から約200km離れた場所まで、自転車で到達。その体験に感銘を受け、勢いで自家用車も手放しました。

今では徒歩や輪行の旅にも視野を広げながら、日々の移動をもっと楽しく、快適にするギアの開発に取り組んでいます。

中国・深圳にある Rongsheng Fashion & Technology Co, Ltd. の開発工房です。同社は、OFFLAP Commuters’ KeyWallet の開発・生産を手がけるパートナー工場です。写真は「開発専用」に設けられた部屋で、量産は行わず、製品の試作や改良のみに使われています。約20名の技術者が在籍し、開発スペースとしては他の工場と比べても非常に広く、設備も充実しています。この工場のオーナーさんも、かつて開発技術者の見習いからスタートしたそうで、現場には開発へのこだわりが随所に感じられました。

中国・泉州にある Quanzhou Xinheng Outdoor Equipment にて、製品の検品を行っている様子です。

OFFLAPでは、私自身が企画・開発・テスト・改良・生産管理・品質管理・輸入・出荷まで、すべての工程に関わっています。

中でも検品は、最も大切な工程のひとつ。新商品や大規模生産の際には、実際に現地に足を運び、現地スタッフと肩を並べて、一つひとつ丁寧に確認しています。

それは単なる「発注元と依頼先」の関係ではなく、国境や立場を超えて、人として、同業者として未来の展望を語り合える、大切な時間でもあります。

現在、OFFLAPがお仕事を依頼している工場は3社のみです。実績のない小さなブランドが信頼できる工場を見つけるのは簡単ではなく、2019年には20社以上を訪問しましたが、当時の発注数と予算を理解し、引き受けてくれたのが今の3社だけでした。

このご縁を大切にしながら、これからも末長くお付き合いできればと願っています。

OFFLAPの製品開発は、製品テスターの存在なしには語れません。

まだ製品として形になる前の段階から、通勤や輪行などの実際の使用環境で試してもらい、使用感や耐久性に関するリアルなフィードバックを受けながら改良を重ねています。

年間走行距離が1万キロを優に超えるようなライダーたちに日常的に使ってもらうことで、製品として世に送り出すときの品質への確信につなげています。

OFFLAPを運営して5年。海外の工場やトレードショーを訪れる出張は、ほぼ利益ゼロの事業運営の中でなんとかやりくりしています。移動はいつも格安プラン、宿泊も「身の危険をギリギリ感じる」ような激安施設。食事はなるべく質素に、洗濯は洗面台で済ませてます。お土産こそ買いませんが、笑えるお土産話には事欠きません。

一枚目の写真は、乗り継ぎ便に間に合わなかったことで出会えた思わぬ「ご褒美」。入国審査の遅延により、ハワイアン航空の配慮でワイキキビーチ近くのホテルに無償で宿泊させてもらえました。円安と高物価のダブルパンチの中、マクドナルドさえ手が出せず、まるで水槽に入れられた熱帯魚のような気分でした。

二枚目の写真は、広州でタクシー移動中に見かけたバイクパッカー。いったいどこからどこへ向かっているのだろう…見知らぬ土地で言葉が通じなくても、自転車に乗っている人を見ると話しかけてみたくなります。

アメリカ・オレゴン州ポートランドにて(2024年)。機能素材の展示会に参加するため、この街を訪れました。ポートランドは、アメリカの中でも特に自転車文化が根づいている都市のひとつです。

秋の肌寒い時期でしたが、多くの自転車通勤ライダーの姿が見られました。印象的だったのは、多くのライダーが「ユーティリタリアン(実用派)」スタイルだったことです。スポーツや趣味としてではなく、日々の移動手段としての自転車が、街の風景としてごく自然に存在していました。

OFFLAPを立ち上げた当初に思い描いていた、「自転車が車と並ぶ移動手段となる世界」のイメージがよみがえり、ライダーを見かけるたびに、「この道で間違っていない」と励まされる思いがしました。

中国・広州にある Dongguan KinFish Technology Co.,Ltd. の開発工房です。KinFishでは、RIDE COOK RIDE のTamaGo の開発と生産を担当していただいています。同社はEVAケースを専門とする工場で、数多くの有名ブランドの製品保護ケースを手がけています。工場オーナーさんいわく、「卵型のケースの依頼は、同業者を含めても前代未聞」とのことでした。

この日は、海外から送られてきた資料の読解に苦戦している様子でした。OFFLAPでも普段はPDFや図面を使ってサンプルを依頼していますが、対面で話せない状況では、本当に意図が伝えられたか、不安になることもあります。技術者が自ら資料を読み、既存のサンプルを手に取りながら内容を解釈していく姿を間近で見ることができたのは、とても貴重な経験でした。次回からは、より伝わりやすい資料を作れるよう、自分も努力しようと強く思わされた一日でした。

TamaGoの開発は、自転車キャンプ中に卵を割ってしまった経験から始まりました。

開発当初から、卵は一つひとつサイズや形が微妙に異なることに気づき、こうした個体差に対応できる保護構造が必要であると感じていました。

最初に試したのは、柔らかいシリコン製のケース。しかし、バッグに入れて持ち運ぶと、他の荷物に圧迫されて卵が割れてしまうという問題が発生しました。

衝撃への耐性や、バッグ内での圧迫に強い素材を模索する中で、手元にあったマイク用のスポンジとEVA製のカメラ機材ケースを組み合わせて試したところ、卵を割らずに保護できることが確認でき、現在のTamaGoの原型が完成しました。

中国・泉州にある Quanzhou Xinheng Outdoor Equipment の作業風景です。同社は、GoDry Shuttle および GoDry Jet の開発と生産を担うパートナー工場です。

通常の縫製に加え、「High Frequency Welding(高周波溶着)」という特殊な技術により、プラスチックコーティングされたナイロン素材の接合が可能な設備を備えています。

写真(下)は、開発部主任の Won 氏とそのアシスタント。Won 氏は工場内で “Sample Master(サンプル・マスター)” と呼ばれており、図面やアイデアを製品の原型へと形にする重要な役割を担っています。

最後は、OFFLAPの社内製造の現場です。工場と名乗るにはかなり気が引ける、寝室を改造した小さな作業スペースが工房です。

現在、OFFLAPでは小規模な社内生産による製品づくりと販売にも取り組んでいます。私自身が一つひとつの製品と向き合い、こだわりを細部まで注ぎ込んでいます。

大量生産ではないからこそ、最先端の機能素材も柔軟に取り入れ、素早く商品化できるのが大きな利点です。さらに、試作段階からの実用テスト、お客様からのフィードバックをもとにした改良サイクルも早く、次の製品にすぐ反映できるのもこの体制ならではです。

夏の暑さが厳しい時期には、2階の事務スペースを避けて、キッチン横の一角がオフィスになり、発送作業場になり、そして時には食卓にもなります。
そんな生活の延長にある空間から、OFFLAPの社内生産製品は今日も生まれています。

もっと多くの人に喜ばれるものを届け続けながら、いつか「工場」と胸を張って呼べる場所を構える日を夢見ています。